親が施設に入ったら
実家はどうする?
売却・賃貸・管理の
判断基準を解説
しかし、空き家は放置するほど選択肢が減り、費用負担が増えていきます。建物の劣化、固定資産税の負担、近隣トラブル、そして将来の相続問題——。早めに方針を決めることが、結果的に家族全員の負担を軽くします。
この記事では、空き家相談士・相続診断士の資格を持つ筆者が、親が施設に入った後の実家をどうすべきか、売却・賃貸・管理の3つの選択肢を比較しながら、判断基準と注意点をわかりやすく解説します。
この記事の内容
「とりあえず放置」が最も危険な理由
当社への相談で最も多いのが、「親が施設に入ってから3年以上そのまま」というパターンです。放置している間に何が起こるかを整理しておきましょう。
建物は人が住まなくなった瞬間から劣化が加速する
人が住んでいない家は換気が行われず、湿気がこもります。上里町・本庄市エリアは夏場の高温多湿に加え、冬場の乾燥による木材の収縮もあるため、建物の劣化が特に進みやすい環境です。1年放置しただけでも、カビの発生や木材の腐食でリフォーム費用が数十万円単位で増えることがあります。
固定資産税は毎年かかり続ける
空き家でも、所有している限り固定資産税は毎年発生します。さらに管理が不十分な場合、「管理不全空家」や「特定空家」に指定されると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスクもあります。
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放置が長引くほど選択肢が狭まる
建物の状態が良いうちは「古家付き土地として売却」「リフォームして賃貸」など複数の選択肢がありますが、劣化が進むと「解体して更地で売却」しか選べなくなります。解体費用は木造30坪で120万〜180万円が目安ですから、その分だけ手元に残る金額が減ることになります。
放置するほどコストが増える悪循環
放置 → 建物が劣化 → 売却時の評価が下がる → 解体が必要になる → 費用がかかる → 手元に残る金額が減る。この悪循環を断ち切るには、できるだけ早い段階で方針を決めることが最善策です。
選択肢① 売却する ― 最もリスクが少ない方法
使う予定がなく、家族の誰も住む可能性がない場合は、売却が最もリスクの少ない選択肢です。
売却のメリット
維持費から解放される ― 固定資産税、火災保険料、草刈り・通水などの管理費用がすべてなくなります。年間で10万〜20万円以上の維持費がかかっている方も少なくありません。
介護費用に充てられる ― 施設の入所費用は月額10万〜30万円が一般的です。売却代金を介護費用に充てることで、家族の経済的負担を大きく軽減できます。
相続時のトラブルを防げる ― 不動産は現金と違って均等に分けにくい資産です。生前に売却して現金化しておくことで、将来の遺産分割のトラブルを防ぐ効果もあります。
売却の注意点
所有者本人の意思確認が必要 ― 不動産の売却は所有者本人(親)の意思に基づいて行う必要があります。親が判断能力を持っている間に手続きを進めることが重要です。認知症が進行してからでは売却が困難になるケースがあります(詳しくは後述します)。
兄弟間の合意が必要 ― 「いつか自分が住むかもしれない」「思い出の家を手放したくない」など、兄弟間で意見が割れることは珍しくありません。感情的な問題ですが、維持費の負担や将来のリスクを数字で示しながら冷静に話し合うことが大切です。
実例 ― 本庄市の実家を売却して介護費用に充てたケース
本庄市内の築40年の実家について、東京都内にお住まいの60代のご兄弟からご相談がありました。お母様が施設に入所されて2年が経ち、毎月の施設費用と実家の固定資産税の二重負担に悩んでおられました。
ご兄弟の間では「母が帰ってくるかもしれない」という思いもありましたが、主治医に確認したところ自宅での生活は難しいとのこと。お母様ご本人にも確認し、同意を得た上で売却を進めました。
建物はお母様がきれいに使っておられたため、古家付き土地として売りに出したところ、リフォーム前提で購入したいという若いご家族から申し込みがあり、約2か月で売却が成立。売却代金はお母様の施設費用に充てることができ、ご兄弟の経済的な負担も大幅に軽減されました。
選択肢② 賃貸に出す ― 収入を得ながら維持する方法
「売却するのはまだ決心がつかないけれど、放置するのは避けたい」という場合に選ばれることがあるのが、賃貸に出す方法です。
賃貸のメリット
家賃収入で維持費を賄える ― 入居者がいれば、固定資産税や管理費用を家賃収入で賄うことができます。うまくいけばプラスの収支になることもあります。
建物の劣化を防げる ― 人が住むことで換気や通水が自然に行われるため、空き家の状態よりも建物の劣化を抑えることができます。
賃貸の注意点 ― 現実的にはハードルが高い
賃貸はメリットがある反面、上里町・本庄市エリアでは現実的に難しいケースが多いのも事実です。
賃貸需要が限られる ― 都心部と異なり、上里町・本庄市周辺は賃貸需要がそれほど高くありません。特に駅から離れた農家住宅タイプの物件は、借り手が見つかりにくいのが実情です。
リフォーム費用がかかる ― 賃貸に出すには、水回りや内装のリフォームが必要になることがほとんどです。築30年以上の物件だと、最低でも200万〜500万円程度のリフォーム費用がかかるケースも多く、家賃収入で回収するまでに長い年月を要します。
管理の手間が発生する ― 入居者対応、設備の修繕、退去時の原状回復など、大家としての管理業務が発生します。遠方に住んでいる場合は管理会社に委託する必要があり、その費用も家賃から差し引かれます。
賃貸が向いているケース
賃貸が現実的に成立しやすいのは、神保原駅や本庄駅の徒歩圏内で、建物の状態が比較的良く、大規模なリフォームなしで貸し出せる物件に限られます。該当しない場合は、売却を優先的に検討する方が合理的です。
選択肢③ 管理しながら保有する ― 判断を先送りする場合
すぐに売却や賃貸の判断ができない場合は、最低限の管理を行いながら保有を続ける方法もあります。ただし、これは「積極的な選択」ではなく「一時的な対応」と位置づけるべきです。
最低限やるべき管理
月1回の換気と通水 ― すべての窓を開けて空気を入れ替え、各水栓から水を流して排水トラップの封水を維持します。封水が切れると下水の臭いが室内に充満し、害虫の侵入経路にもなります。
草刈り(年2〜3回) ― 上里町や本庄市では、夏場は草の伸びが非常に早く、2か月放置すると敷地が草に覆われてしまうことも珍しくありません。近隣への影響も出やすいため、少なくとも年2〜3回の草刈りが必要です。
郵便物の回収 ― 郵便受けに郵便物が溜まっていると、空き家であることが外から一目でわかります。不法侵入や放火のリスクを高めるため、定期的に回収するか、郵便局に転送届を出しましょう。
外観のチェック ― 屋根・外壁・雨樋の破損がないか、窓ガラスが割れていないかを確認します。台風や大雪の後は特に注意が必要です。
遠方に住んでいて管理できない場合
東京やさいたま市にお住まいで、上里町・本庄市の実家に頻繁に通えないという方は多くいらっしゃいます。その場合は空き家管理サービスの利用を検討してください。月額数千円〜1万円程度で、換気・通水・草刈り・外観チェックなどを代行してくれます。
管理を続ける場合の注意
管理にはコストと手間がかかります。固定資産税+管理費用で年間15万〜25万円程度の維持費が発生するのが一般的です。「いつか決めよう」と先送りしている間にこの費用は積み上がっていきます。保有を続ける場合は、「いつまでに方針を決めるか」という期限をあらかじめ設定しておくことを強くおすすめします。
親が認知症の場合は要注意 ― 売却できなくなるケース
実家の売却を検討する上で、最も見落とされがちな落とし穴が親の判断能力の問題です。
認知症が進むと不動産が「凍結」される
不動産の売買契約は、所有者本人に「売る意思」と「判断能力」があることが前提です。親が認知症で判断能力が著しく低下している場合、たとえ子どもであっても勝手に親の家を売ることはできません。
このような場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人に代わって売却手続きを行うことになります。ただし、成年後見制度には以下のような注意点があります。
申立てから選任まで2〜4か月かかる ― すぐに売却を始めることはできません。
家庭裁判所の許可が必要 ― 居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要で、必ず認められるとは限りません。
後見人の費用が発生する ― 弁護士や司法書士が後見人に選任された場合、月額2万〜6万円程度の報酬が発生し、本人が亡くなるまで続きます。
実例 ― 認知症で売却が難航したケース
上里町内の実家について、さいたま市にお住まいの50代の方からご相談がありました。お父様が施設に入所されて5年、実家はその間ずっと空き家状態でした。「そろそろ売却したい」とご連絡をいただきましたが、お父様の認知症が進行しており、売買契約に必要な意思確認が困難な状態でした。
結果的に成年後見人の申立てから選任まで約3か月、さらに家庭裁判所の売却許可を得るまでに2か月、合計で売却完了まで約8か月を要しました。ご相談者は「父の判断能力があるうちに動いておけばよかった」と悔やんでおられました。
事前にできる備え ― 家族信託という選択肢
親の判断能力が十分にあるうちに検討したいのが、家族信託(民事信託)です。これは、親が元気なうちに子どもなどの信頼できる家族に不動産の管理・処分権限を託しておく制度です。
家族信託を設定しておけば、親が認知症になった後でも、受託者である子どもの判断で不動産を売却できます。成年後見制度と比べて手続きが柔軟で、裁判所の関与も不要です。
ただし、家族信託の設定には司法書士や弁護士への相談が必要で、信託契約書の作成費用として30万〜80万円程度がかかります。費用はかかりますが、将来の「売りたいのに売れない」というリスクを考えれば、十分に検討する価値があります。
ポイント
家族信託は親の判断能力があるうちにしか設定できません。「まだ大丈夫」と思っているうちに、まずは専門家に相談だけでもしておくことをおすすめします。不動産の売却相談と合わせて、提携の司法書士をご紹介することも可能です。
3つの選択肢を比較 ― どれが合っているかチェック
売却・賃貸・管理の3つの選択肢について、主な特徴を比較します。
| 比較項目 | 売却 | 賃貸 | 管理して保有 |
|---|---|---|---|
| 維持費の負担 | なくなる | 家賃で賄える可能性あり | 年間15万〜25万円程度 |
| 初期費用 | 仲介手数料等 | リフォーム費用(200万〜500万円) | 管理費用(月数千〜1万円) |
| 手間 | 売却完了まで(数か月) | 入居者管理が継続的に発生 | 月1回程度の管理作業 |
| 収入 | 売却代金(一括) | 家賃収入(毎月) | なし |
| 将来の相続 | 現金化でトラブル防止 | 不動産として残る | 不動産として残る |
| 向いている人 | 戻る予定がない方 | 好立地で建物状態が良い方 | 判断に時間が必要な方 |
判断のポイント
迷った場合は、まず「家族の誰かが住む可能性があるか」を正直に考えてみてください。現実的に住む予定がないのであれば、建物の状態が良いうちに売却するのが最も合理的な選択です。「いつか」は多くの場合、来ません。
上里町・本庄市・深谷市周辺でよくあるご相談パターン
当社にいただくご相談の中から、よくあるパターンをご紹介します。ご自身の状況に近いものがあれば、参考にしてみてください。
パターン1:東京在住、上里町の実家が3年以上空き家
最も多いパターンです。親が施設に入所後、「いつかやろう」と思いながら数年が経過しています。毎年の固定資産税に加え、帰省のたびに草刈りをする負担もあります。このパターンでは、建物の状態を確認した上で、早めの売却を検討されるのがおすすめです。
パターン2:兄弟3人で意見が合わない
長男は「売りたい」、次男は「持っておきたい」、長女は「どちらでもいい」——このような状況は非常に多く見られます。話が進まない間も維持費は発生し続けます。第三者(不動産会社や司法書士)を交えて、費用負担を含めた具体的な数字をもとに話し合うことで、合意に至りやすくなります。
パターン3:親の認知症が進行していて売れるか不安
先述のとおり、認知症の進行度によっては成年後見制度の利用が必要です。まだ判断能力が残っている場合は、家族信託の設定を検討する価値があります。いずれにしても、早めに専門家に相談することが最も重要です。
パターン4:実家に親の荷物が大量にあり、片付けができない
「家の中が荷物だらけで、とても売りに出せる状態ではない」というご相談も多くいただきます。遺品整理・生前整理の専門業者に依頼すれば、仕分けから搬出まで対応してもらえます。費用は3LDKで15万〜40万円程度が目安です。売却を前提に動く場合は、片付けの段取りもあわせてご相談いただけます。
まとめ
親が施設に入った後の実家には、「売却」「賃貸」「管理して保有」の3つの選択肢があります。どれが最適かは、建物の状態・立地・家族の状況によって異なりますが、共通して言えることがあります。
それは、「放置」が最も高くつく選択だということです。建物は劣化し、固定資産税は毎年かかり、選択肢は年々狭まっていきます。
特に注意したいのが親の判断能力の問題です。認知症が進行してからでは、売却の手続きが大幅に複雑化し、時間も費用もかかります。動けるうちに動くことが、家族全員の負担を軽くする最善の方法です。
「何から始めればいいかわからない」という方は、まず現状を専門家に相談するところから始めてみてください。
親の施設入所後の実家でお悩みなら、お気軽にご相談ください。
売却・賃貸・管理、どの方法が最適か、現地を確認した上でアドバイスいたします。
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