相続した農地付きの実家、
売却するには
どうすればいい?
農地転用の手続きと
注意点を解説
上里町・神川町・美里町などの埼玉県北部エリアでは、実家と一緒に農地を相続するケースが非常に多くあります。
ところが、農地は通常の宅地のように自由に売買することができません。売却や宅地への転用には農業委員会の許可が必要で、手続きに数か月かかることもあります。
「農地があるから売れないのでは?」と諦めている方も少なくありませんが、正しい手続きを踏めば売却は可能です。この記事では、相続診断士の資格を持つ筆者が、農地付き不動産の売却方法・農地転用の手続き・注意点をわかりやすく解説します。

この記事の内容
なぜ農地は自由に売れないのか
日本では、農地は農地法という法律によって売買や転用が厳しく制限されています。これは、国の食料生産基盤である農地を守るための制度です。
具体的には、農地を売買するには農業委員会の許可が必要であり、農地を宅地や駐車場など農地以外の用途に変更する(=農地転用)にも許可が必要です。許可なく農地を転用した場合、原状回復命令や罰則の対象になります。
つまり、相続した農地を「そのまま不動産市場に出して売る」ということは原則としてできません。売却するには、農地のまま農家に売るか、農地転用の許可を得てから売るかのどちらかの方法を取る必要があります。
農地転用とは?許可の種類と基本の仕組み
農地転用とは、農地を農地以外の用途(住宅地・駐車場・資材置場など)に変更することです。農地転用には、主に以下の2つの許可があります。
| 許可の種類 | 内容 | 申請先 |
|---|---|---|
| 農地法第4条許可 | 自分の農地を自分で転用する | 農業委員会(都道府県知事許可) |
| 農地法第5条許可 | 農地を転用して第三者に売却する | 農業委員会(都道府県知事許可) |
相続した農地を売却する場合は、第5条許可が必要です。これは「転用」と「所有権移転」を同時に行う許可で、売主と買主が共同で申請します。
ポイント ― 市街化区域の農地は届出だけでOK
農地が市街化区域内にある場合は、許可ではなく農業委員会への「届出」だけで転用できます。届出は許可と比べて手続きが簡単で、期間も短く済みます。上里町・本庄市エリアでも、市街化区域内に農地がある場合はこの届出で対応可能です。まずはご自身の農地がどの区域にあるかを確認しましょう。
農地転用が許可されるケースと許可されないケース
農地転用の許可・不許可は、農地の「立地基準」と「一般基準」の2つの基準で判断されます。
立地基準 ― 農地の区分による制限
| 農地の区分 | 転用の可否 |
|---|---|
| 農用地区域内農地(青地) | 原則不許可(農振除外が必要) |
| 甲種農地 | 原則不許可 |
| 第1種農地 | 原則不許可(例外あり) |
| 第2種農地 | 周辺の土地で代替できない場合は許可 |
| 第3種農地 | 原則許可 |
上里町・神川町・美里町の農地には、農用地区域(いわゆる「青地」)に指定されているものが少なくありません。青地の場合、農地転用の前に農振除外(農業振興地域の整備計画からの除外)という手続きが必要で、これだけで半年〜1年以上かかることがあります。
一般基準 ― 転用の確実性
立地基準をクリアしても、転用計画に確実性がなければ許可されません。具体的には、「転用後に何に使うかが明確であること」「資金計画が実現可能であること」「周辺の農業に支障がないこと」などが求められます。
「とりあえず転用してから考えよう」は通用しない
農地転用の許可を申請するには、転用後の具体的な利用計画が必要です。「とりあえず宅地にしておきたい」「使い道は後で考える」という理由では許可されません。売却を前提にする場合は、買主(=転用後の利用者)が決まってから第5条許可を申請するのが通常の流れです。
農地転用の手続きの流れと期間
農地転用(第5条許可)の一般的な流れは以下のとおりです。
| ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 農地の区分・区域の確認 | 1〜2週間 |
| 2 | 農振除外の申請(青地の場合) | 6か月〜1年以上 |
| 3 | 買主との売買契約(条件付き) | 2〜4週間 |
| 4 | 農地転用許可の申請 | 申請から許可まで1〜2か月 |
| 5 | 許可後に所有権移転登記 | 1〜2週間 |
農業委員会への申請は毎月の締切日が決まっており、締切を過ぎると翌月回しになります。上里町の農業委員会は毎月10日頃が締切、本庄市は毎月月末が締切(時期により変動)です。スケジュールを逆算して動くことが重要です。
実例 ― 上里町の農地付き実家を売却したケース
上里町内で、自宅(宅地150㎡)と隣接する農地(200㎡)を相続した方からのご相談です。お父様が亡くなり、相続人であるご本人はさいたま市在住。農業を継ぐ予定はなく、自宅・農地ともに売却を希望されていました。
農地は市街化調整区域内でしたが、第3種農地に該当したため、農地転用の許可取得の見込みがありました。住宅用地としての買い手を募り、購入希望者が見つかった段階で農地法第5条の許可申請を行いました。
農業委員会への申請から許可取得まで約6週間。その後の所有権移転登記を含め、ご相談から売却完了まで約5か月で解決しました。農地が絡む分、通常の売却より時間はかかりましたが、早い段階でご相談いただいたことでスムーズに進みました。
農地のまま売却する方法(農地法第3条許可)
農地転用が難しい場合(青地・第1種農地など)は、農地のまま農業を営む人に売却する方法があります。これは農地法第3条の許可を得て行います。
第3条許可の要件
買主が農業を営んでいる(または営む見込みがある)ことが条件です。具体的には、買主が取得後に効率的に農地を利用すること、買主の農地面積が一定以上(下限面積)であることなどが求められます。
農地のまま売る場合の課題
農地としての売却価格は宅地と比べてかなり低くなります。上里町・本庄市エリアでは、農地の売買価格は坪あたり数千円〜数万円程度が目安です。宅地であれば坪10万円以上の評価がつくエリアでも、農地のままでは10分の1以下になることがあります。
また、農業従事者の高齢化が進む中、農地を買いたいという人自体が減少しています。特に小規模な農地は買い手が見つかりにくいのが現実です。
ポイント
「農地転用が難しそうだから」と最初から諦めるのではなく、まずは農地の区分を正確に確認しましょう。第2種・第3種農地であれば転用の可能性がありますし、市街化区域内であれば届出だけで済みます。当社では農地の区分調査から農業委員会との事前相談まで対応しています。
上里町・神川町・美里町の農地転用事情
農振除外のタイミングに注意
上里町・神川町・美里町では、農用地区域(青地)に指定されている農地が広く存在します。青地の農地を転用する場合は、まず農振除外の手続きが必要です。農振除外の受付は年に1〜2回しか行われない自治体もあるため、タイミングを逃すと1年以上待つことになります。売却を検討し始めたら、まず農振除外の受付時期を確認することが大切です。
宅地と農地がセットで一筆になっているケース
農家住宅では、自宅の敷地と農地が一つの地番(一筆)にまとまっているケースがあります。この場合、売却にあたって分筆(土地を分けて別々の地番にする)が必要になることがあります。分筆には測量費用(20万〜40万円程度)がかかるため、事前に費用を把握しておきましょう。
農地の相続届出も忘れずに
農地を相続した場合は、農業委員会に「農地の相続届出」を行う必要があります(届出は相続を知った日からおおむね10か月以内)。届出を怠ると10万円以下の過料の対象となります。相続登記とあわせて忘れずに手続きしましょう。
関連記事
相続した不動産の手続き全体の流れについては、こちらの記事で解説しています。
▶ 相続した不動産、何から始める?手続きの流れと期限を解説
まとめ
相続した農地付きの実家を売却するには、通常の不動産売却とは異なる手続きが必要です。農地法による制限、農業委員会の許可、農振除外の手続きなど、ハードルは確かにあります。
しかし、農地の区分や所在する区域によっては、届出だけで転用できるケースや、比較的スムーズに許可が下りるケースも多くあります。「農地があるから売れない」と決めつけず、まずは正確な情報を確認することが大切です。
特に上里町・神川町・美里町エリアでは、農振除外の受付時期が限られているため、できるだけ早い段階で動き始めることが解決への近道です。農地の区分調査、農業委員会への事前相談、売却方法の検討まで、当社でワンストップでサポートしています。
農地付きの実家の売却、「難しそう」と諦める前にご相談ください。
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