相続した不動産を
兄弟で共有すると
どうなる?
トラブルになる前に
知っておくべきこと
相続した実家を「とりあえず兄弟で共有にしておこう」と決めていませんか?
遺産分割協議の場では、争いを避けるためにひとまず共有にするケースが少なくありません。しかし、不動産の共有は「問題の先送り」にしかならず、時間が経つほど状況は複雑になっていきます。
売りたい人と持っておきたい人で意見が合わない、共有者の一人が認知症になって手続きが止まる、次の世代に相続が発生して共有者が倍増する——。こうした事態は、実際に非常によく起こっています。
この記事では、相続診断士の資格を持つ筆者が、不動産の共有が引き起こすリスクと、共有状態を解消するための具体的な方法をわかりやすく解説します。

この記事の内容
不動産の「共有」とは?基本を押さえる
不動産の共有とは、一つの不動産を複数人で所有している状態のことです。相続の場合、遺産分割協議で「実家は兄弟3人で3分の1ずつ共有する」といった形で決まることが多くあります。
また、遺産分割協議がまとまらないまま放置している場合も、法定相続分に応じた共有状態(法定共有)になっています。
共有だと何ができて、何ができないのか
共有不動産は、行為の種類によって必要な同意の範囲が異なります。
| 行為の種類 | 具体例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 修繕・不法占拠者の排除 | 各共有者が単独でできる |
| 管理行為 | 短期の賃貸借(3年以内) | 持分の過半数の同意 |
| 変更・処分行為 | 売却・建替え・長期賃貸借 | 共有者全員の同意 |
ここで特に重要なのは、売却には共有者全員の同意が必要だということです。たとえ持分が9割あっても、残り1割の共有者が反対すれば不動産全体を売ることはできません。
共有不動産で起こる5つのトラブル
トラブル1:売りたい人と持っておきたい人で揉める
これが最も多いトラブルです。兄は「管理が大変だから早く売りたい」、弟は「思い出の家を手放したくない」——。お互いの気持ちはわかるものの、共有者の一人でも反対すれば売却は進みません。当社でも「5年以上話がまとまらず、建物がどんどん傷んでいる」というご相談が実際にあります。
トラブル2:管理費用の負担で揉める
共有不動産の固定資産税、修繕費、草刈り費用は、本来は持分に応じて全員が負担すべきものです。しかし実際には、実家に近い一人だけが管理と費用負担を引き受けているケースがほとんどです。「自分ばかり負担している」という不満は、時間が経つほど大きくなります。
トラブル3:共有者の一人が認知症になる
共有者の一人が認知症を発症し、判断能力が低下すると、その方の同意が法的に得られなくなります。売却には全員の同意が必要ですから、一人が認知症になっただけで不動産が「凍結」してしまいます。売却するには家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があり、時間も費用もかかります。
トラブル4:二次相続で共有者が倍増する
共有者の一人が亡くなると、その持分はさらにその相続人へ引き継がれます。たとえば兄弟3人の共有だった不動産が、一人が亡くなりその子ども2人が相続すると、共有者は4人に。さらに時間が経てば5人、6人と増えていきます。共有者が増えるほど全員の合意を得ることは困難になり、事実上売却不能になるケースもあります。
実際にあった深刻なケース
当社にご相談のあった上里町の案件では、祖父の代に兄弟4人で共有にした農家住宅が、二次相続・三次相続を経て共有者が15人以上に膨れ上がっていました。全員の所在を調べ、連絡を取り、同意を得るだけで1年以上かかりました。最初の相続の時点で共有を避けていれば、こうした事態は防げたはずです。
トラブル5:持分だけを第三者に売却される
共有者は、他の共有者の同意なしに自分の持分だけを第三者に売却することができます。まれなケースですが、共有持分の買取を専門とする業者に持分を売却されてしまい、見知らぬ第三者と不動産を共有する状態になることがあります。こうなると交渉の難易度が一気に上がります。
共有状態を解消する3つの方法
すでに共有状態になっている場合、解消する方法は大きく3つあります。
方法1:換価分割 ― 売却して現金を分ける
不動産を売却し、売却代金から費用を差し引いた残額を共有者の持分に応じて分配する方法です。最も公平でスッキリする解決方法です。
「誰がいくら受け取るか」が明確なため、トラブルになりにくいのがメリットです。全員が売却に合意さえすれば、あとは不動産会社に任せて手続きを進められます。
実例 ― 兄弟3人の共有不動産を換価分割で解決
本庄市内の実家(土地50坪・築40年)を兄弟3人で共有していたケースです。長男は本庄市在住、次男はさいたま市、長女は東京都内にお住まいでした。長男が管理を続けていましたが、固定資産税と草刈りの負担に限界を感じてご相談いただきました。
兄弟会議を経て全員が売却に合意。古家付き土地として仲介で売り出し、約4か月で売却が成立しました。売却代金から諸費用を差し引いた残額を3等分し、全員が納得する形で解決できました。長男は「もっと早く相談すればよかった。管理の負担から解放されてほっとした」とおっしゃっていました。
方法2:代償分割 ― 一人が取得し、他の相続人に金銭を支払う
共有者の一人が不動産を単独で取得し、他の共有者に対して持分相当額の金銭(代償金)を支払う方法です。「誰かが住み続けたい」「事業用に使いたい」という場合に向いています。
ただし、代償金を支払う資力が必要です。たとえば評価額1,500万円の不動産を3人で共有していた場合、単独取得する人は他の2人にそれぞれ500万円ずつ、合計1,000万円を支払うことになります。
方法3:共有物分割請求 ― 最終手段
話し合いでどうしても解決できない場合、裁判所に共有物分割請求を申し立てることができます。裁判所が分割方法(現物分割・換価分割・代償分割)を判断します。
ただし、裁判手続きには時間(半年〜1年以上)と費用(弁護士費用等)がかかり、親族間の関係がさらに悪化するリスクもあります。できる限り話し合いでの解決を目指し、裁判はあくまで最終手段と考えてください。
遺産分割の段階で共有を避けるには
共有トラブルを防ぐ最善の方法は、そもそも共有にしないことです。遺産分割協議の段階で、以下のような方法を検討しましょう。
不動産は一人が取得し、他の財産で調整する
遺産の中に預貯金や有価証券がある場合、不動産は一人が取得し、他の相続人には預貯金等を多めに配分するという調整が可能です。遺産全体のバランスで公平性を確保する方法です。
売却を前提とした遺産分割協議をする
「不動産を売却し、その代金を分ける」ことを遺産分割協議書に明記しておく方法です。これなら形式的には一人の名義にして売却手続きを進めつつ、売却代金は全員で分配するという流れになります。
ポイント
遺産分割協議は「争いを避けるため」に曖昧な結論を出しがちですが、不動産の共有は曖昧さが最もトラブルを生む分野です。「誰が取得するか」「売却するならいつまでに」を明確に決めることが、将来のトラブル防止につながります。
上里町・本庄市周辺でよくある共有トラブル事例
農家住宅の敷地が広く、分割が難しい
上里町・神川町・美里町では、敷地面積300㎡を超える農家住宅が珍しくありません。「現物分割(土地を分ける)すればいい」と思われるかもしれませんが、接道条件や最低敷地面積の規制、分筆費用などの問題があり、現実的には難しいケースが多いです。
相続人が県外に散らばっている
子世代が東京・さいたま市・横浜などに転出しているケースが大半です。共有者全員が集まって話し合う機会を作ること自体が難しく、合意形成に時間がかかります。不動産会社や司法書士など第三者が間に入ることで、話し合いがスムーズに進むことが多いです。
農地が含まれていて手続きが複雑
宅地と農地がセットで共有されているケースでは、売却時に農地転用の手続きが絡み、さらに時間がかかります。共有者全員が農地転用申請に協力する必要があるため、一人でも非協力的な場合は手続きが止まってしまいます。
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相続不動産の手続き全体の流れと期限については、こちらの記事で解説しています。
▶ 相続した不動産、何から始める?手続きの流れと期限を解説
まとめ
相続した不動産の共有は、一見すると平等な解決策に見えますが、実際には多くのトラブルの原因になります。売却に全員の同意が必要であること、管理費用の負担が偏ること、認知症や二次相続で問題が複雑化すること——。これらのリスクは、時間が経つほど大きくなります。
すでに共有状態にある場合は、換価分割(売却して代金を分ける)が最もスムーズな解決方法です。これから遺産分割をする段階であれば、安易に共有にせず、「誰が取得するか」「売却するか」を明確に決めることを強くおすすめします。
「兄弟で話がまとまらない」「共有のまま何年も経ってしまった」という方は、まず第三者に相談することが解決の第一歩です。当社では、提携の司法書士・弁護士と連携しながら、共有不動産の売却をサポートしています。
共有不動産のお悩み、一人で抱え込まずにご相談ください。
売却の段取りから兄弟間の調整まで、経験豊富なスタッフがサポートいたします。
査定だけのご依頼も歓迎です。
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